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2008年9月

宮下恵茉 『ジジきみと歩いた』 【児童書】

ジジきみと歩いた (学研の新・創作シリーズ) ジジきみと歩いた (学研の新・創作シリーズ)

著者:宮下 恵茉
販売元:学習研究社
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もし。考えても仕方のないことだが、どうしても考えてしまう。もし、ぼくが頭がよかったら。運動ができたら。お金持ちだったら。お父さんもお母さんもそろっていたら。どうしようもないことのせいにして、自分を認めてあげないのは簡単でラクだ。いつの間にか陥ってしまう思考の連鎖。断ち切るためには一体どうすればいいのだろう―――。ジジは、いつも遊ぶ河原にいた野良犬だ。河原の空き地がなくなっちゃうことになって、翼が飼うことになった。全然乗り気じゃないのに、いつも一緒にナンベーをやってた仲間が、翼のうちには庭があるからと決めたのだ。みんなで散歩に行くって約束だったのに、いつの間にか翼と来生くんだけがジジの面倒を見るようになっていた。じじむさい顔をしているからジジ。散歩してるとおしっこ垂れ流しちゃうジジ。それになんだか、翼のことをばかにしているジジ。いつもくよくよしてお前は何にも知らないだらしないヤツだなあと言ってるみたい。そんなジジを始めは好きになれなかった翼も、段々と彼を認め、そして彼を通していろんなことが見えてくるようになる。自分を中心に回っていた世界が、ジジを通して次第に外へと開いていく。外に待っていることは、楽しいことばかりじゃない。イヤでも見つめて、ぶつかっていかなくてはならないことばかりだ。でも、くよくよぐるぐるの思考の連鎖を断ち切るためには、外に出るのが一番だろう。翼を外に連れ出してくれたのはジジや来生くんで、彼らと付き合うことで自分を見つめなおす勇気が生まれた。翼に待っているのは別れだったとしても、それを乗り越えることのできる強さが生まれた。犬はいいよなあ。全身で訴えてるもんね。ぼくと遊んでよ、ぼくを愛してよってさ。子供も結構素直に全身で訴えてるのにね。ジジと翼と来生君と。切ないラストだけれど、一気に読めてあぁなんかよかったcatfaceと思える話。

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藤巻吏絵 『美乃里の夏』

美乃里の夏 (福音館創作童話シリーズ) 美乃里の夏 (福音館創作童話シリーズ)

著者:長 新太,藤巻 吏絵
販売元:福音館書店
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小学生も高学年になると、好きな人の話で盛り上がったよな。みんな真剣にあの子は誰が好きだーこの子はどうだーって、こそこそやってた。そういえば、バレンタインが近くなった頃、なぜか掃除中ずっとクラスのひとりの女の子から「あの子にチョコあげなよ」とせめたてられたことがあったけど曖昧に無視した覚えがある。いじめなのかと思ったけど、今思えばあの子はその男の子が好きだったんだろう。自分が好きな男の子が親友のことを好きだと気がついてしまった美乃里。なんともいえない焦燥感と孤独感。そんな時に出会った男の子、実みのり。すっと現われて消えてしまう、そんな彼が気になっていた夏休み。近所の銭湯で彼と偶然再会する。ひょんなことから彼と一緒にその銭湯の掃除を手伝うことになった美乃里は、銭湯の主である頑固じいさんも交え、この夏だけの、とっておきの夏休みを過ごすことになった。銭湯で見つけたふたりの秘密、美乃里を肯定してくれる実。頑固でとっつきにくいけれど話してみたら優しくて料理の上手い木島のじいさん。ひとつのことに夢中になりながら優しい時間に包まれて、美乃里はいつしか自分自身を肯定していけるようになる。出会いと別れを経験して、今まで知らなかった現実を知り現実と折り合いをつけていくことを覚えていく。あの頃はいろいろなことが、そう、人を好きになるってことも、新鮮できらきらと輝いていたなあと思う。今より何事にも真剣に対応し向き合ってたよなぁ。あたたかくじんわりとくるお話。

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はらだゆうこ・絵 『わくわくちくわくん』 【絵本】

わくわくちくわくん わくわくちくわくん

著者:尾崎 美紀
販売元:ストーク
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わくわくを探しにでかけるちくわくん。ひとりが大好き。ひとりでも大丈夫。でも、わくわくよりも、ドキドキハラハラがちくわくんの身に!そこに現われたのは、かわいい女の子。ふたりで行けばふたり分のわくわくが見つかるよ・・・。

ちくわ、です。それも孤独を愛するニヒルなちくわ。彼が遭遇するピンチは見ものです。あっちゃんも目を丸くするピンチ。そこへ彼を救ってくれる少女が現われる。赤いリボンの似合うさっちゃんですが、子供特有のズサンさが、ちくわに棒つっこんで助けるみたいなところに現われてて楽しい。それにしても、めだかと泳ぐちくわ・・・いいねえ。ふやけないのかしら。ラストの場面で、絶対ちくわが食べたくなるんです。ほんとhappy01

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長嶋有 『ぼく落ち着きがない』

ぼくは落ち着きがない ぼくは落ち着きがない

著者:長嶋有
販売元:光文社
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日常はとめどなく続く。てなことを思ったおはなし。何が落ち着きないんだと思って読んだんだけど、桜ヶ丘高校の図書部のたるーい(失礼)、けれど充実した活動の日々が書かれていて、主人公の望美ちゃんなんてむしろ落ち着き払っている。あえて言うなら、図書室の両開きのドアをゆらゆらと開けて、更に部室のドアを押し開けて入ってくる部員達の出入りの激しさが落ち着かないかな。たらたらとしたゆるい雰囲気に油断してると、一体誰が誰だかわからなくなるんだもの。図書部に流れる一体感とあふれる居心地の良さ。それは本が好きだーと思っている望美ちゃんの視点で話が進むからだろうか。彼女の視点はバランスよく、そして変な部分に細かい。でも、その細かさがストンと胸に落ちるような感覚を覚えさせてくれてこれまた心地よい。本を読んでいたからこそわかるのよこの気もちーってなところとか、長嶋有さんって女性なのかって思った。他の部員から見ていたらまた別な感じの図書部がそこにあるのかもしれない。同じ目と鼻と口を持っていても全く違う顔をしているように、同じ部で仲良くひとつ方向を目指しているようでも、心の中では全く違う思いを抱えている。ゆるい部室にもリアルがちょろちょろと顔を出し、話を引き締める。しかし、ここまでのん気な高校三年生も珍しいよな・・・。あ、ウワサの片岡哲生、エピソードだけでとうとう絡んでこなかったのが残念・・・って思ってたら、忘れかけてた頃、もしかしてこれって?と思えるさりげない場面・・・。んー雰囲気に流されてたらたら読んでたらダメなおはなしだったかも?

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宇多川優子 『反則先生~5年2組のレッドカード白書』【児童書】

反則先生―5年2組のレッドカード白書 (for Boys and Girls) 反則先生―5年2組のレッドカード白書 (for Boys and Girls)

著者:佐藤 真紀子,宇田川 優子
販売元:ポプラ社
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人は自分が知っていることを他人に教えたいと思う。大人も子供も平等に。ただ大人が子供に自分の知っていることを教えようと思う時、つい説教くさくなる。なぜなら、自分は彼らよりも多くのことを経験し、彼らの知っていることについて更に多くを語ることができるから。そして、子供たちにより良く生きて欲しいと願っているから。多くの子供が親や先生の言うことを半分信じて生きていく。勉強していい学校に進学すれば、大人になっても幸せですよ・・・何せ経験者が言うのだから、多分本当のことなのだろうと勉強する。するよなあ。でもって、点数でいいか悪いか評価されたら余計がんばるよなあ。動物だもん、根っから戦いは好きなのだ。だから、この本に出てくる悪役薬丸先生の言うことも正しいことは正しいのだ。価値観のモンダイなわけだ。子供たちを思う気持ちは多分誰にも負けてないのだ。まあ、こんな先生がいたらイラッとするだろうけど。特に誠のように、常に自分にも周りにも正直に生きていたい人には。誰でも自分にとって全てが上手くいく場所にいつでもいられるわけではない。ましてや子供の時は、全てまわりが決めた場所にいるしかないのだ。いかにして与えられた場所で生きていくか。全てが自分にとってサイアクと感じる場所でも、見方を変えれば違う捉え方ができるかもしれない。戦い続けたら、違う道が開けることがあるかもしれない。それを勉強するためにガッコウに行くのかもね。ところで、意外に先生が中途半端な気がして残念。まあ、ドラマに出てくるような正義のセンセイってのも現実味薄いかsmile

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宇田川優子 『ふたりのランナー』 【児童書】

《児童書・小学生高学年くらいから》

小学6年生の敦あつしは、陸上競技会の1000Mの代表選手になれそうだった。朝の練習にも真面目に出てがんばってきたのだ。それなのに、先生は転校してきた隆一りゅういちのことを気にかける。確かに隆一は敦よりタイムが早い。だけど、さっぱり練習に来ないのだ。隆一に勝たなければ代表選手になっても仕方がない。敦はクラスでもひとり浮いている隆一のことが気になり始める。実は隆一は家庭内の問題に直面していた――。真っ直ぐで熱くなるタイプの敦。クールでハンサム、家庭の事情から影のある隆一。体格もちぐはぐ、性格も反対で合わないふたりが、次第に心を開き打ち溶けあっていく。「自分、不器用ですから」みたいなぶつかりあいがストレートで楽しい。会話はちょっと大人っぽい気もしたけど。6年生の時って、こんなにストレートにぶつかりあうことってできたっけ?もっと、ガキだったような。そんな大人っぽい感じが『バッテリー』のふたりを思い出させたんだけど、この話はあそこまで混沌とせずに綺麗にラストに向かっていく。敦も隆一もとてもいい子って印象かな。家庭にしろ、友達にしろ、わからないことを抱え込んでいても仕方がない。外に向かって走り出していきたい。その時、自分をひっぱり出してくれる友達、もしくは大人がいたら最高だよなあとしみじみ思う。

バッテリー (角川文庫) バッテリー (角川文庫)

著者:あさの あつこ
販売元:角川書店
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誉田哲也 『武士道セブンティーン』

武士道セブンティーン 武士道セブンティーン

著者:誉田 哲也
販売元:文藝春秋
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表紙が青いね。二人の間に亀裂が入っていて、波がザブーンって。いや、“セブンティーン”の文字がそう見えたっていうかね。ふふ。でもこの表紙、すごくよく内容を表している。別々の地で武士道を模索することになった香織と早苗。赤い表紙だった『シックスティーン』では、香織が自分に、そして自分の剣に悩み道を見つけようともがいていたが、今回は早苗がもがき苦しむ。新天地での剣道は自分の目指す剣道とは全く違ったからだ。彼女が転校した福岡西高の剣道は、スポーツとしての剣道。ひとつの競技として勝敗にこだわる剣道だった。そういえばと思い出すのは、北京オリンピックでの柔道。すでにそこにある柔道はローマ字で表記された「勝つため」の競技だった。そこに武士道はあるのか。まあ、柔道は剣とは違うので武士道がどうとかいう問題ではないのかもしれないけど。もし剣道がオリンピック競技となったら、フェンシングやボクシングまで取り入れて、勝つために戦う国際化されたKENDOUとなるのだろうか・・・なんてこと思ったりして。香織はセブンティーンになって、一皮むけた様に丸くなった。相変わらず言葉使いはワルいし武士なんだけど。早苗ちゃんも今時のキャピキャピしたギャルかと思いきや、意外に一本筋が通っている。そんな所が剣にも現われるのだろう。彼女の剣を認める人は多い。だけど、二人ともまだまだ発展途上中。剣だけでなく家族や友人との間での暗中模索、これも剣を極めるために必要なことなのだろう。勝つために戦うのではなく、収めるために戦う・・・剣道って奥が深いよなあ。二人には更に更に極めて欲しい・・・ってことでエイティーンの彼女達に会えることを期待したい。ところで今回、岡先輩は女子たちの噂くらいの登場だったが、やっぱり強いんだか軟派なんだかよくわからない。その上、香織につきまとう清水クンも微妙にヨワッチイ。北京オリンピック見てても、ねえ。やっぱり武士な男は希少価値なのかもね。

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荻原規子 『レッドデータガール はじめてのお使い』

RDG レッドデータガール  はじめてのお使い (カドカワ銀のさじシリーズ) RDG レッドデータガール はじめてのお使い (カドカワ銀のさじシリーズ)

著者:荻原 規子
販売元:角川グループパブリッシング
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また一冊、読み逃せない本が登場したという気分。さすが、息をもつかせぬ展開。壮大な物語のほんの第一歩なのだろうが、びっちりと楽しめた。普通になりたいけれど決して普通などありえない泉水子いずみこ。彼女の立場は読む者にとってはうらやましくもあり、反面、残酷だとも思わせる微妙なバランスを取っている。そして、豪華な取り巻き陣。読んでいて『八雲立つ』を思い出したのだが、ぜひ、樹なつみ氏に漫画化して欲しいと思わせるスケールの大きい強力な取り巻き達!鬼畜だけれどスポーツ万能美形の少年・深行みゆきは彼女を守る立場にあるという。年を感じさせないアイドルのような素敵なオジサマは彼女の理解者だが、敵なのか味方なのか。男勝りの女医という理解者もいれば、少し拍子はずれているが優しい父親と行動力抜群で美しい母親。泉水子が内気で冴えない女の子と表現される度、彼らの存在が輝いていくような。そんな傍から見たら贅沢な環境に埋もれず染まらず、自分を守ってきた泉水子もとうとう殻を破らなければならない時がくる。今までの生活を守るために、どうしようもない苦境から逃れるために、やっと一歩を踏み出した泉水子だが、その一歩が自分にも周りにも計り知れず大きい一歩となる。物事の表面だけをなでて生きていくことをやめた彼女が、今後、深行と共にどう戦い成長していくのか楽しみだ。

八雲立つ   1  /樹 なつみ [本] 八雲立つ   1 /樹 なつみ [本]
販売元:セブンアンドワイ ヤフー店
セブンアンドワイ ヤフー店で詳細を確認する

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福田岩緒 『おつかいしんかんせん』

おつかいしんかんせん (そうえんしゃ・日本のえほん 11) おつかいしんかんせん (そうえんしゃ・日本のえほん 11)

著者:福田 岩緒
販売元:草炎社
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4歳のまさるくん、寝ても覚めても買ってもらったしんかんせんの形をしたくるまのことばかり。とうとう、お母さんに頼まれたお使いもしんかんせんに乗って出発です。運転手さんも車掌さんもこなさなくちゃならないけど、なんのなんのまさるくん、勢い良く飛び出して行く。やおやさんまでいくつもの難関が待ち構えているけど、しんかんせんと一緒ならだいじょーぶっという所でしょう。あたたかみのあるダイナミックな絵でまさるくんの冒険が繰り広げられて、あっちゃんも興味津々でした。帰りが各駅停車ってのも、いいよね。

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雫井脩介 『クローズド・ノート』

クローズド・ノート クローズド・ノート

著者:雫井 脩介
販売元:角川書店
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展開はわかりやすかった。おかげで変な意味で安心して読めたというかなんていうか。映画は観てないんだけどな。全体的にちぐはぐしてるような印象が残ってしまったのは何故だろう。偶然が見事で強引だから?香恵かえちゃんの、引っ込み思案だけど結構行動力のある性格に違和感があったとか?親友の恋人の突拍子もない行動とか?伊吹先生のノートは見事だった。精一杯がんばっている姿を思い浮かべることができて、涙涙。万年筆が小道具として使われている。その書き味を思い出すと、伊吹先生の言葉がとても暖かいふんわりとした感覚と共に甦る気がする。映画には伊吹先生も登場するのだろう。彼女の人生には視覚を伴って触れてみたいと思うので、レンタルしてみようかなあ。

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