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2008年11月

早見和真 『ひゃくはち』

ひゃくはち ひゃくはち

著者:早見 和真
販売元:集英社
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正直、このタイプの女の子は苦手なんだなぁ・・・上目遣いで「私のことわかってくれてる?」「もう、やっぱりわかってないんだからあ」っていう感じ?男の人が好きそうなイージーなイメージの女性。いやいいんですけど。話の展開で重要なポジションにいる彼女ですし。いいんですけど。いてもいなくても。おっと。・・・なーんて、かわゆく生きれなかった者のひがみ的に、主人公の彼女にツッコミ入れていた前半。お話は、転勤が決まってへこみ気味のサラリーマンの青野雅人の現在と、甲子園を目指すばりばりの高校球児だった青野雅人の熱い過去が交互に進んでいく。

甲子園目指してるとはいえ、俺たち青春まっさかり。やるこたやるぜ、きっちりと。みたいな青臭い高校生が坊主頭のくせして盛り上がっている。そのノリについていくのが大変だったが、甲子園を目指して恐怖政治を敷く監督の元で一致団結していく様子に、段々とこちらがノリノリになっていく。野球の名門校・京浜高校に一般入試で入った雅人と一番の親友のノブが、甲子園に行けるのか、行けたとしてレギュラーになってベンチに入ることができるのか…。彼らの葛藤がリアルに書かれていて、一緒になって一喜一憂してしまうのだ。特に試合では我らが雅人くんが意外な活躍をしたりして、それもまた嬉しい。甲子園という場所が彼らにとってどれだけ特別な場所なのか、しみじみ感じさせられる。テレビ見てるだけじゃあ伝わってこない部分がたくさんあるんだよね。

怒涛の如く高校2年生を走り過ぎようとしていると、ついっと現在に戻されてしまう。またですか、彼女かわいいですけど、まあいいんですけど。すっかりじじ臭くなっちゃった雅人くん、一体過去に何があったんですか。

と思いながら、後半。さらに大問題が持ち上がり、雅人は窮地に陥ることになるのだ。もう、そこからページを繰る手も止まらないし涙も止まらない。青臭いんだけど、なんとなく理不尽なんだけど、そんな行動に出てしまった雅人に拍手を送らずにはいられない。「ばかだなあ」というため息と共にね。彼をいいヤツだよなあと思うのは、父親とのエピソードがとても気が利いてるからだろう。面と向かってがんばれとはいえない父親がいいんだなあ。

映画化されてるんですねえ。でも、どうだろう、展開もわかってるし。この青臭さを画面で見たいかというと・・・微妙。俳優次第でビデオ借りてみる?

ひゃくはち プレミアム・エディション ひゃくはち プレミアム・エディション

販売元:ジェネオン エンタテインメント
発売日:2009/01/23
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あさのあつこ 『NO.6』

NO.6〔ナンバーシックス〕#7 (YA!ENTERTAINMENT) NO.6〔ナンバーシックス〕#7 (YA!ENTERTAINMENT)

著者:あさの あつこ
販売元:講談社
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少し前に新聞で、塀で囲まれた町中で暮らすことを選ぶ人が増えているという記事を読んだ。確かに物騒な世の中だ。町ごと囲んで管理しセキュリティを万全にして部外者は決して入れないようにすれば、安全だといえるのかも知れない。“NO.6”が、あながち絵空事ではないような気がしてくる。塀の中の住人に“外の人とわたし達はちがうんです”という考え方が生まれるのは当然だろう。囲われることに違和感を覚えない住人。危ないものは排除するという考え方は確かに理に適っているが、汚いものに蓋をして目をそらしても、現実はそこにあるままでなくなるわけではない。むしろ、排除するよりも対処する方法を考えなければならないのに。守られることに慣れると、考える力すら奪われる。

人間が人間を支配することはできないのか――常に光り輝き統制された世界を保ってきたNO.6が崩壊を始めた。紫苑とネズミが壊しに行く前に、すでに崩壊は始まっていたのかもしれない。人を支配し全能の神と成り得た人間がいたとしても、その神の心が必ずしもぶれないとは言い切れない。完璧と思われた人の心にもひびが入る時が必ずある。人はひとりでは生きていけないのだ。あらゆる人のあらゆる思いが交錯し世の中が作られていくように、ひとりひとりの人生も多くの人との交流によって、右にも左にも上にも下にも自由に進んでいく。NO.6を統制している人物の姿がまだ見えてこないが、彼のひびは一体どのようなものなのだろう。閉ざされた理想の世界を思う時、樹なつみさんの『OZ』を思い出す。あの話にも、心にひびが入った寂しい支配者がいた守りたいものがあるという強い気持ちが芽生え、紫苑は強くなっていく。自分を纏っていた殻を破りながら、少しずつ誰よりも優しく強くなる。反対にネズミは弱くなっていく。誰も信じるなという言葉に背き、紫苑を手に入れてしまった時から。少しずつあたたかさを覚えると、心が緩んでいく。涙も溢れる。涙を流すことを覚えて、彼はまたひとつ強くなっていくのかもしれない。

そしてまたしばらくお預け。クライマックスに向けてまっしぐらというところだろうか。理想郷NO・6を中心とした陰惨で壮絶な不幸の連続からは、決して明るい未来が待っているようには思えない。それでも、ラスト、ふたりとその協力者たちに穏やかな風が吹いていることを願わずにはいられない。

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OZ 完全収録版1 OZ 完全収録版1

著者:樹 なつみ
販売元:白泉社
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西村すぐり 『ぼくがバイオリンを弾く理由』

ぼくがバイオリンを弾く理由 (ノベルズ・エクスプレス 2) ぼくがバイオリンを弾く理由 (ノベルズ・エクスプレス 2)

著者:西村 すぐり
販売元:ポプラ社
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スカイエマさんの素敵な表紙。それにしても、最近よく見かけますねスカイエマさん。どの本もイメージが同じになってしまう感があるのは否めませんが・・・という自分もエマさんの表紙に魅かれて手に取りました、この本。優秀で引っ込み思案な少年が挫折を味わい親や兄弟とも上手な距離が取れない時、特殊な大人たちや自由な友人たちと交流を持つことによって視野を広げ家族の絆を見直し、また新しい一歩を踏み出して成長していく・・・定番です。でも、このパターン、一番感動するんだよなあ。

ところで、その昔、故朝比奈隆氏の指揮でベートーヴェンの交響曲第5番「運命」と第6番「田園」を聞いたのですが、常日頃カラヤンの雪崩落ちるような「運命」と、ゆったりしつつも華やかな「田園」を聞き慣れていた自分には、とてもゆっくり過ぎて入り込めず半分寝ながら聞いていた、という失礼な思い出があります。それはともかく、その帰り偶然一緒になった大学で美術学科を専攻していた友人が、その演奏を「本当に田園が見えるようなキラキラした緑とか麦の色合いを思い浮かべた」と表現したのです。「運命」も然り。鮮やかな色彩を挙げて抽象的な表現で感想を述べてくれたと覚えています。「どんな色だと思った?」と聞かれてものすごーく困った。だって、半分寝てしまうくらい何も得られなかったから!その時強く思ったのは、芸術に優れているというのはこういう所にも現われるんだなということです。音楽が色を伴った風景として彼女の中を流れている。音も色で表現できる。すごいなあと本当に感心したのでした。

この話のカイトくんがバイオリンを弾いている様子を読んで、彼女を思い出しました。カイトくんは感覚で音をとらえバイオリンで表現している。こうしようああしようとがんばらなくても、音が表したいことを感覚的に捉えられる才能を持っている。上手くなって世に出るということは、才能を他人に認められないといけない。でも世の中に認められということは、そんなに甘くなく自分の思う様にはいきません。自分を取るか世間を取るかの挫折。でも、結局は自分自身が楽しくなくては、相手には伝えることはできない。つまらないと思っていると、顔に出るように音にも出るでしょう。バイオリンのソロコンサートで、弦が切れて演奏が中断したことがありました。でも、あれは本当に観客が最低だったんです、自分も含めて。きっとソリストもつまらないと思いながら弾いていて、切ってしまったんでしょう。いろんな意味でつまらないコンサートだったと覚えています。その反対に、演奏者の思いと観客の思いが一体になり、震えがくるほどの感動が起こることがある。音楽ってすごいなと思う瞬間です。カイトくんが新しく得た友人たちと一体感を得て、音楽の力を、そして自分が弾きたいと思う理由を実感した瞬間、とても感動しました。少々、意固地なところがある大人び過ぎた小学生のカイトくんですが、ひとつ壁を乗り越えて成長した音色を聞いてみたいですね。YAな方達のクラッシック入門的に、もう少し曲名とかあってもよかったのにとも思いました。

ベートーヴェン:交響曲第6番 ベートーヴェン:交響曲第6番

アーティスト:朝比奈隆
販売元:オクタヴィアレコード
発売日:2000/05/24
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ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&第6番「田園」 ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&第6番「田園」

アーティスト:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 カラヤン(ヘルベルト・フォン)
販売元:ユニバーサル ミュージック クラシック
発売日:2007/09/05
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片川優子 『動物学科空手道部1年高田トモ!』

動物学科空手道部1年高田トモ! 動物学科空手道部1年高田トモ!

著者:片川 優子
販売元:双葉社
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作者の片川優子さんは1987年生まれだそうだ。SPEEDのお嬢さん達より若いのか!『佐藤さん』を書いた時が中3だったというから驚き。『佐藤さん』を読んだ時ありきたりかなと思った覚えがあるが、もしその事を知ってたらまた違う感想があったかなぁ。実際に大学生なのだから、臨場感たっぷりの高田トモの学生ライフも納得。楽しそうだよ、ほんと。ぶりぶりなお姉さんを尊敬し、彼女のようになりたいと生きてきた高田友恵。だが、その姉の裏切りにも近い行為によって自分を省みた結果、動物を扱う大学の学部を選んで進み、更に女らしさを捨てるために、そしてひとつのことをやり遂げるために空手部を選ぶ。前半は強がってたトモちゃんも中盤では恋に生きる女になってしまい、後半ではすっかり空手中心に世界が回ってしまった。人生長いってのに、短い間でやりたいこと選んでやってしまおうと思ったって無理。大人になっていくということは、いろんなことを見て知って、いろんな人と出会って触れ合うことによって視野を広げていくことだ。恋愛もたくさん経験するのがいいんだろうけど、どうもトモちゃんの周りには軽い感じの子が多いねえ。今時なのか?トモちゃんの恋は、過去の苦い経験が足をひっぱったというのかトモちゃんのひとりよがりで終わってしまう。まあキリンくんの考えていることもさっぱりわからないんだけどね。さっぱりわからないといえば、トモちゃんの友達も不思議な子が多い。動物科って一体どんなことするんだろうかってのも微妙わからなくて、それはやっぱりトモちゃんが途中から空手に打ち込んじゃうからなんだろうけど、うーん。真っ直ぐで素直なトモちゃんは魅力的だけど、全体的に消化不良って気分。どうやらまだ続きがあるみたいなので、ちょっと安心した。それにしても、トモちゃん、恋も空手もいいけれどもっと勉強しようぜ。あと、普通に書かれちゃってるけど、未成年はお酒はダメですよ。もちろん大麻もね(笑)
佐藤さん (講談社文庫 か 101-1) 佐藤さん (講談社文庫 か 101-1)

著者:片川 優子
販売元:講談社
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