小森真弓 『きのうの少年』
著者:小森 真弓
アキの家の南側、雑木林の中に運動場ほどの池がある。そこでケイト、達弘、タケやんとその池の主を見たのは小学校に入って間もない頃のこと。水面から跳ね上がり一瞬だけその大きな姿を現した魚。主の大きさについてはいつももめるけど、宝物を心にしまっている四人はいつでも一緒だと思っていた。少なくともアキは。あれから5年。最上級生になり、それぞれがそれぞれの道を歩み始める。部活を始めて池から遠のいていく達弘とタケやん。マイペースに池や自然を愛すケイト。そしてそんなバラバラな状態をなんとなく面白くないと感じているアキ。春から冬へ、池を取り巻く自然と共に伸びやかに成長していこうとする少女アキの様子が丁寧に書かれている。
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そう、アキは女の子だ。少女のものがたりとなると、主人公はセンシティブな感じの子が多いような気がする。石井睦美さんや草野たきさん。引っ込み思案だったり、悩みを抱えていたり。友情や家族の間でゆらゆらと揺れる女の子の繊細な心の内。そんな女の子らしい女の子たちに共感しながら読むのも楽しいのだが、アキはちょっと違う。お母さんを早くに亡くしたアキはお父さんと二人暮らし。友達はケイト、達弘、タケやんの男子3人。若沙という女の子の友達もいるが、どうも一線引かれているし自分でも一線引いている。当然、行動は男の子同然。6年生にもなると色恋の話に浮かれ始めるものだが、全く無頓着で3人と接するものだから、やっかみを受けたりする。「よつばと」のよつばちゃんが大きくなったらこんな感じ?みたいな純粋で活発なアキが、周囲の変化と共に“女の子”の部分を成長させていく。景色が毎日ちょっとずつ変化してるくらいにほんのりと成長していくアキ。受け入れたくなくても、受け入れなくちゃならないことがある。イヤだばかりではいられなくなる時期に、大事なものを守るために自分ができることは何か素直にぶつかっていく。ゆったりとした自然の中でゆっくりと流れていく時間が気持ちいい。とても大切な宝物を読むような気分を味わえた一冊。
著者:あずま きよひこ
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