« 山本幸久 『ある日、アヒルバス』 | トップページ | 大崎梢 『片耳うさぎ』 »

久保寺健彦『空とセイとぼくと』

空とセイとぼくと 空とセイとぼくと

著者:久保寺 健彦
販売元:幻冬舎
Amazon.co.jpで詳細を確認する

表紙だけ見た思い込みで読み始めると、あまりの展開に唖然とすることがある。スカイブルーの爽やかな表紙を手に取り、ほお、ラストわんこが死んじゃうってとこかなー泣ける本だなよし、くらいで読んだこの本も驚きの連続だった。

主人公、零れいの出身地は上野公園。美術館や動物園があるこのお山は、ホームレスが多く集まるという裏の顔を持っている。零はここで育ちここでセイと出会った。雑種で捨てられた子犬だったセイは散歩をしてくれる零に懐き大きくなっていく。お父さんが死にセイの飼い主も死んでしまうと、零とセイの果てしない旅が始まった。何も知らないけれど、生きていかなければならない。子供だって知恵を駆使して生きていこうとする。住むところと食べるものがあれば幸せ。零とセイは親子のように兄弟のように、そしてかけがえのない友達としてお互い助け合って、人目を避けて放浪していく。そんな生活が終わるのは、ある街の公園でリョウくんに出会ってから。・・・そういえば、彼はどうなったんだろう。ワルだけど素直でいいヤツのリョウくんに誘われて、零はホストとしての生活を始めることになる。そこで出会ったゲストのリカ。金離れはいいけれど事情持ちの彼女は零を気に入る。それから道端で見かけたブレイキン。身体を激しく動かしてくるくると踊るその様子に、零だけでなくセイも反応する。二人とも音楽に合わせて身体を動かすのが大好きだし、抜群の動きができたのだ。出会いが零の人生を変えていく。何も知らなくても持っていなくても生きていくことはできる。だけど、それはただ生きていくだけのこと。出会いが生きていくということに彩をつけ幅を広げていく。時につらく厳しいこともあるけれど、分かり合える人がいるということ、のめり込めるものがあるということは、生きることが幸せだということにつながっていく。零の人生、そうだな、わらしべ長者というのかな、「フォレストガンプ」だな。欲もなく無心で向かっていく彼のもとに、自然に幸福が集まってくる。もちろん、幸せばかりではない。でも、わからないなりに工夫し勉強して生きていこうとがんばる零の姿に感動する。そして、彼に寄り添うセイに感心する。リカの設定は極端すぎると思ったけれど、よく考えたら零の存在自体、極端で摩訶不思議だ。彼の身の上は悲惨ではあるが、物語全体が暗くなることはない。むしろセイと共に軽やかに進んでいき、ページを繰る手を止められない。そして読後、涙を拭きつつも、その表紙のように爽やかな気分になれたのだ。

にほんブログ村 本ブログへにほんブログ村 本ブログ ヤングアダルトへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

フォレスト・ガンプ 一期一会 スペシャル・コレクターズ・エデ [DVD] フォレスト・ガンプ 一期一会 スペシャル・コレクターズ・エデ [DVD]

販売元:パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
発売日:2008/06/20
Amazon.co.jpで詳細を確認する

|

« 山本幸久 『ある日、アヒルバス』 | トップページ | 大崎梢 『片耳うさぎ』 »

か行の作者」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1093991/26808461

この記事へのトラックバック一覧です: 久保寺健彦『空とセイとぼくと』:

« 山本幸久 『ある日、アヒルバス』 | トップページ | 大崎梢 『片耳うさぎ』 »