垣谷先生?おおっ!それも、教授になられてるではないですか!そのはず『チーム・バチスタの栄光』よりは未来の設定。(でもちょっと・・・ドラマの印象強いよなー(゚ー゚;)他に田口先生もがんばってるみたいだし、ちょっとだけ翔子さんも登場。そして驚きのアツシくん。『ナイチン・ゲールの沈黙』では「ケロロ軍曹」のよう言葉使いだった彼がクールに成長して登場。もうバッカスの話はしないのかなあ…と思ったら!! ・・・他にも桜宮市を舞台に活躍している方が何人か。主人公の薫くんも他の話と関係あるらしいし、薫がパパに助けを求めた時に提示された二つの方法“アクティヴ・フェーズ”と“パッシヴ・フェーズ”は、もちろん、かの有名な白鳥氏が得意とする戦法ですねえ。ふたりにはどこかつながりがあるのかも?と思わされます。(パパの説明、わかり易かったなあ。パパ、凄し。)いやはや、その緻密な設定には脱帽です。さすがお医者さん、神経とか血液みたいにうねうね枝分かれしていく様子を、記憶し、つなげていくことがお得意なのでしょう(゚m゚*)
・・・なんていう風に、他の話とリンクさせて読むのも楽しいけど、読んでなくたって全然OK。世界的なゲーム理論学者・曽根崎伸一郎の息子、薫は桜宮中学の一年生。潜在能力試験で全国1位という見事な成績を取ったおかげで、東城大医学部への入学を認められた。と書くと“どんだけ優秀なんでしょー薫クン”と思うが、その優秀な成績には、実にカンタンなカラクリがあったわけで。実際は歴史以外からきし勉強駄目!な薫。“日本初の中学生の医学生”として大学へ通ことにしたのも、「中学でかったるい授業続けなくていーかも!」と考えたから。まあ、気がついたら巻き込まれてたといった方が正しいのか。スーパー中学生が医学部で大発見!大改革!みたいなスカッとするような話かと思ったら、そんな単純ではない。たまたま発見してしまった実験結果の論文を巡り、自己保身のカタマリ藤田教授に振り回されて窮地に陥ってしまうのだ。薫は優秀かつユーモアたっぷりのパパ、医学オタクや頭脳明晰の楽しいクラスメイト、そしてひと癖ある医学部の先輩たちの助けを借りて、窮地を打開しようとするのだが・・・。
薫は、ついつい、試験で全国1位を取ってしまうような“お子様”。そんな調子で大人の世界に放り込まれても、突然成長するわけもなく。ただ、その場を取り繕うように自分を演じているうちに、大人たちの欲が絡んだ黒い事情に巻き込まれ翻弄されていく。もちろん、自分の身を守ることもできない薫がひとりで太刀打ちできるわけもなく。周りの人たちまで巻き込んで、現実というものをイヤというほど思い知らされる。そう、ラストもちょっぴり苦いのだ。知らない、ということはそれだけで罪になることがある・・・そのことを強く思い知らされる話。
大人たちが、いつでも子供の味方であるのは理想だ。世の中には、自分のために子供だって利用しようとする大人がいる。そうでなくても、大人の世界に子供が立ち入ることを嫌う大人は、大人と呼ばれるようになった人ほぼ全てだろう。大人の事情は子供が知ることではないのよ…というのがタテマエだが、いつかは子供も大人になる。ここから大人、と区切られることなんてない。無知であることが取り返しのつかない罪となるのだったら、自分から自分の足で大人の世界へ踏み込まねばならない。無知であることは、時に恐れを知らずに突き進む勇気にもなるのだ。知らないということを自分で理解し、なおかつ明言して進むことで、薫の未来がさらに広がっていった。
海堂氏は“こどものキモチ”ってのも“おとなの事情”ってのも、平等に理解されているようだ。どちらもバランスよく詰め込まれていて面白かった。大人の事情、特に藤田教授はちょっとヒドイけど。

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