白岩玄 『空に唄う』
著者:白岩 玄
なんだったんだろう・・・と、読み終わって思う。23歳の僧侶見習いの海生かいせいが出会ってしまったひとりの女性。どうやら彼女は死んでいるらしく。でも彼にしてみたら、実体はそこにあり、しゃべることもできるリアルな存在。あくまでも、海生の内面に寄り添うように話が進んでいく。よくあるゴーストバスター的な話でもなく、一緒に難問を解決しようというわけでもなく。ただ、静かに彼女に寄り添うように日々を過ごす海生。幽霊や死人として付き合うのではなく、存在を受け入れてしまえば、相手も自分と同様に生きているような自然な感覚で接し、淡く恋心を抱く。彼女の動作にどぎまぎしている彼に、つい「おいおい、彼女は死んでるんだろ」とツッコミたくなるくらい。あくまでも海生からの視点なので、彼女・・・崎沢さんが、一体自分の置かれた境遇をどう考えて、どう対処したいのかはあまり伝わってこない。ただ、とても戸惑い、とても辛いということはぽつぽつと伝わってくる。ひとりぼっちの世界を彷徨うことと、二度死ぬことになる恐怖は計り知れない。そして、海生の日常が何事もなかったかのように続いていき、そうだな、ずっと静かにお経を読んでいたんだなあと、じんわりと思うのだ。
空に唄う
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